昨日、モバイルオーダーの「ダイニー」が74.6億円もの巨額調達を発表しました。
国内スタートアップとしては異例のすべて海外投資家からの調達とのことです。名だたる海外投資家が参加しています。
この「ダイニー」、一体何がすごいのか?巨大産業をニッチから攻め込んだダイニーに迫ります。
飲食店モバイル「ダイニー」が74億円を調達。
9月27日、ダイニーが74.6億円もの巨額調達を発表しました。
出資者はBessemer、Hillhouseなど海外投資家からのみとのことです。豪華な名前が並びますね…。
これは日本のスタートアップの歴史を変えるファイナンス
Bessemer、Hillhouseの共同リードは世界でもほぼないはず。ウルトラ激アツ https://t.co/L3h5Gx5DLP
— 平川 凌 (@g7z5e) September 26, 2024
Bessemer、Hillhouse、Flight Deck、Thriveという普段僕らがPodcastで聴くような投資家たちがダイニーの仲間になってくれました。CI変更も決済参入も含めて仕込みに仕込んでて最高ですね。 https://t.co/RdWRm8AY6A
— 佐俣アンリ (@Anrit) September 26, 2024
ダイニーに投資したBessemerの投資先一覧が下記、ここに日本のスタートアップが並ぶのは凄すぎます..。
ダイニーに投資したBessemerの投資先エグいな… pic.twitter.com/OOZLX6mbNG
— 阪井 優 / 請求書振込サービスなら「ペイトナー」 (@redxyz_) September 26, 2024
ではこのダイニーのサービスについて見ていきましょう。
サービス is シンプル、ダイニーが捉えたニッチな「店舗内のモバイルオーダー」というニーズ
ダイニーのサービスは表向きは非常にシンプルです。
飲食店のオーダーをモバイルで出来るという仕組み。すでに串カツ田中など大手も導入しており、利用された事がある方も多いのではないでしょうか。
店舗でQRを読み込み、そこからライン追加し、注文するというもの。
このシンプルなサービスを提供するダイニー。実はユーザー数1,000万人を突破しています。
なぜここまでユーザーが伸びるのか?さらに見ていきましょう。
ダイニーの何がすごかったのか?注文から顧客IDを資産に繋げる仕組み
ダイニーの凄さは、toC、toBにとってメリットのある機能提供に加えて、「ユーザー向けマーケティングコストが極限まで0円に近い」状態を作り出していることです。
1.マーケティングコストがかからず急成長できる「ダイニー」の仕組み
ダイニーの加盟店はこのようなメニューを店舗に設置しており、店舗によってはすべてのオーダー&メニューをダイニーに1本化している店舗もあります。ユーザーはQRを読み込み、店舗でのオーダーを行います。
ユーザー側は「面倒なオーダー」がモバイルで出来るので、店員さんが近くにいなくてもオーダーが可能です。また、複数人で同時に好きなものを選ぶなども実現可能に。かなり便利ですよね。
このダイニーを利用するにはLINE友達追加が必須となっており、友だち追加後にLINEアプリからオーダーをする仕組みとなっています。
つまり、ダイニー側としては導入店舗が増えれば増えるほどLINE連携のユーザー資産が積み上がる構造を実現しています。ユーザー数1,000万人というのもここがカラクリなんです。
ダイニーとして広義な意味でのユーザーは積み上がる仕組み。つまり、ある意味で無料で会員獲得のマーケティングできてしまっているということです。
2.ダイニー、徹底的なCRMで顧客を資産に繋げる新たな形
店舗側のメリットもありすぎるのがダイニーの良いところです。加盟店側は紙にQRを印刷するだけでモバイルオーダーを導入する事ができます。
さらに、ダイニーを利用することでLINEを利用したCRMが可能になります。店舗側はオーダー時にLINE友だち追加したお客さんに対して、メッセージ配信などが可能となります。
オーダー履歴などを元に配信メッセージなども変えて送ったり、来店からの日数でステップメッセージを送信できるとのこと。店舗側にとってかなり強力な武器となっているようです。
※LINE友達追加についてはSNSでは否定的なコメントもあることを添えておきます。
下記の店舗などはダイニー経由で2.8万の友達にメッセージを配信。1ヶ月で727万円の売上増加に寄与したとのこと。いや…すごすぎでは…。
ダイニーのCRM管理ダッシュボードでは「新規のお客様が連れてきたリピーター」など細かい分析などまで見れるようです。痒いところに手が届く機能ですね。
これだけではなく、ダイニーを導入することによって、インバウンド需要も巻き取れます。海外のお客さま向けにメニュー表の翻訳だけでなく、オーダーまでワンストップで可能に。
至れり尽くせりのダイニー。この時点で「いいな…」となりますよね。さらなる展開があります。
3.ニッチから巨大市場に踏み込む「ダイニー」の可能性
調達発表に先駆け、ダイニーでは9月4日にダイニープラットフォーム構想を発表しておりました。
単なるモバイルオーダーからの脱却すると明言しています。
モバイルオーダーから攻め込んだダイニー。ファイナンス、タレントマネジメントなどあらゆる展開の可能性を検討しているようです。
編集部で注目しているのは「ディスカバリー」領域。ダイニーでは来店客にアンケートを取っており店舗のランキングデータを保有しています。回答数は脅威の63万件。
つまり、ダイニーはガチ来店ユーザーによるガチ評価・オーダー情報を資産として保有しているわけで、Rettyが崩せなかった食べログの牙城も崩すポテンシャルもありそうです。
これだけでなく、決済機能によるオーダーから決済までのワンストップ化、オーダーと連携した材料の仕入れ自動化など、展開の可能性は無制限にありそうです。
開示資料によると、すでに日本人の6人に1人がダイニーを使ったことがあるとのこと。インフラとしての基盤は整いつつあります。
ダイニー、店舗が増えれば増えるほど経済圏が拡大する「正のサイクル」を実現しています。では実際の売上高や解約率などを見ていきます。
ダイニーの売上高20億円を突破。ユーザー数は1,000万人。
ダイニーの採用資料に記載されていた売上高は20億円でした。急激な成長を遂げています。
以下が開示されていた売上高データ。T2、D3超えてませんかこれ…。
【ダイニー売上推移】
2018年:0円
2019年:85万円
2020年:1300万円
2021年:1.7億円
2022年:3.0億円
2023年:6.8億円
2024年:20.3億円
現状は「店舗」「従業員」「店舗本部向けFintech」の三軸で展開しているとのこと。この領域をさらに横と縦で展開していくようですね。
そして、素晴らしいのはプロダクトだけでなく、彼らのカルチャーです。ダイニーも順風満帆でなく、何度もピボットを繰り返した末にダイニーというプロダクトの開発に至っています。
「六本木で寝泊まり営業」、成功に導いたユーザーファーストな視点とピボットの歴史
ダイニー代表の山田さん、Xではピボットまでの歴史なども語られています。創業期は六本木に寝泊まりしながら営業していたとのこと。
300件以上を飛び込みで訪問し、「◯すぞ!」というような恫喝を受けた経験もあると吐露されています。
実は「ダイニー」自体が、1年開発したプロダクトを捨てるという大きな意思決定を経て、たった5日の開発期間でリリースされています。大きなピボットですね。
小さなピボットも幾度としており、ダイニーが現在の形になったのも「顧客に向き合い続けた結果」だと言えそうです。
ダイニーは経営陣自身が現場・顧客主義を貫いており、その原体験が強固なプロダクト作りのアイデア基盤になってきたようです。
このカルチャーはすべてのレイヤーでも浸透しているようで、なぜか何度もバイトに間違われてシフト確認されてしまうエンジニアさんなどいるとのこと。飲食店のグループLINEに参加させてもらっているそうです。
クライアント様の社内チャットに溶け込みすぎて、自社のアルバイトだと思われている当社のエンジニア https://t.co/MIO393MrYD pic.twitter.com/T4HC1IXjnE
— 山田真央|ダイニー (@maochil) June 20, 2024
このようにダイニーでは顧客に向き合い続けた結果として、チャーンレートは0.5%未満という信じられない低さを維持しています。この数字も顧客に向き合い続けるカルチャーが成し遂げた賜物だと言えるのではないでしょうか。
モバイルオーダーというニッチなニーズの解決から始まったスタートアップの「ダイニー」。ダイニーが最終的に狙うのは海外を含めた20兆円市場。
いま、日本だけでなく世界の飲食業界全体のインフラになるための一歩を踏み出しました。
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補足:ダイニー代表の山田さん、経営やプロダクトに関することを1日1ツイートされているのでおすすめです。プロダクト開発の考え方などは非常に参考になります。
久しぶりにしびれる調達&骨太なプロダクトでした。
【話題】74.6億円調達した「ダイニー」、CEOが日本のスタートアップ界隈に対して思うことをnoteにつづる。
日本のスタートアップ界隈は一塁打を狙いすぎているとして、国内VCの市況感や調達の背景などを語られています。
「1塁打」を狙う日本のVCに、存在価値はあるのだろうか?… https://t.co/kidbGhwBs6 pic.twitter.com/lXoDp2oELC
— SUAN / スタートアップメディア🎈 (@suan_news) September 26, 2024