以前報じたフォースタートアップ公表の「評価額ランキング」に関しての続報となります。
参考記事:時価総額2000億のスタートアップ「ADVASA」、2020年に上場廃止となった仮想通貨”JOBCOIN”と深い関わりか。フォースタートアップスの空虚なランキングへの警鐘
実は1月19日に本メディアにて記事公開後、東洋経済でも本件を2回にわたり追加調査をされていたようです。
本記事によると、フォースタートアップスは「外部からの指摘があり評価額ランキングの公開を見送った」とのこと。前回記事の振り返りおよび、メディアが担ぎ上げる危険性について取り上げます。
フォースタートアップス運営の「STARTUP DB」が公開していた評価額ランキングの問題点
スタートアップメディア「STARATUP DB」では毎月評価額ランキングを発表、そこで23年1月発表分に突如「評価額2000億円で2位」に躍り出たADVASAという会社。
このADVASAについて調査を行った所、ほぼ希薄化させない増資で評価額を積み上げ。さらに社員数は4名・バーチャルオフィスなど企業としての実態があるか疑わしい状態が明らかになりました。
ADVASAの評価額2000億円はどのようなロジックだったのか。
本メディアで指摘したのは増資に対する「希薄化率」です。たった0.5%の増資で評価額を2000億円まで上げていることが謄本より判明しています。
この指摘の一方で短期間でサービスが異常に伸びている可能性もあると思い、被保険者数と住所を調べておりました。
ADVASAの登記住所はリージャス(レンタルオフィス)、被保険者数はたった4名。
ADVASAが登記されている住所の「東京都港区元赤坂一丁目2番7号赤坂Kタワー4階」はバーチャルオフィスのリージャス。
さらに、被保険者に関しては「たったの4名」で運営されていることが判明しています。
評価額2000億円の企業にも関わらず、バーチャルオフィスかつ社員4名という現状。
さらに追加調査でADBASAは短期間で暴落し、トラブルを抱えた「JobCOIN」という仮想通貨の発行や、汚職で逮捕された議員との関わりも判明しています。(詳細は過去記事より)
フォースタートアップスは「しれっと」評価額ランキングを非公表へ。
これらの指摘に対して、フォースタートアップスは毎月公開していた評価額ランキングをしれっと非公表にしております。
フォースタートアップスは東洋経済からの取材に対して「外部からの指摘があり、公表を見送った」と説明しているとのこと。
既に公開予定から1ヶ月以上経過しており、メディア読者に対しては何の説明もなく公表を見送っている状況となっています。過去分も掲載が続いており、指摘があったのであれば過去分も見直すべきではないでしょうか。
評価額ランキングを開示している他2メディアはどう動いたのか?日経新聞は事前に「ハック対策」をしていた
この「評価額ランキング」、他のメディアはどのようにランキングを作成しているのかも見ていきましょう。23年3月現在、国内で評価額ランキングを開示しているのは下記3社となっています。
- 日本経済新聞
- フォースタートアップス(STARTUP DB)
- UZABASE(INITIAL)
これらの企業がどのように対策しているのかを見ていきましょう。
日本経済新聞は「独自ロジック」でユニコーンハックを防止
日経新聞に至っては、下記のように「ADVASA」など希薄化率の低い企業はランキングに含まれていませんでした。昨年12月時点でソニーベンチャーズ鈴木氏が比較画像の投稿をされています。
2022年末の未上場企業評価額ランキング(日経およびスタートアップDBより) pic.twitter.com/wHazFzk5js
— 鈴木大祐 @ソニーベンチャーズ/Sony Innovation Fund/Sony Ventures (@SuzukiDicek) December 31, 2022
日経新聞は東洋経済からの取材に対して「独自ロジックで作成している」と公表しています。このあたりは流石の日経ですね。
ユーザーベースのINITIALは最新分から「希薄化率」を表示。
続いてユーザーベースの「INITIAL」は最新公開分から「希薄化率」も併記し、ユニコーンハックかどうか分かるようなランキングにされています。
今回のレポートで注目すべきは、恒例の評価額ランキングにおいて、前回の希薄化率が1%未満の会社が明示化されたこと。
希薄化率の高低によって評価額の確らしさは大きく変わるので、大変参考になります。
高い評価額で少額の第三者割当をすることによってユニコーンはつくれてしまいますからね。 pic.twitter.com/vu8sOKPqpe— 朝倉祐介 -Yusuke Asakura (@Jockey723) January 31, 2023
ちなみに、INITIALではそれまでも調達額を併記しておりました。
このように各社ユニコーンハック対策をしているにも関わらず、表彰してしまっていたのがフォースタートアップスです。
「スタートアップメディア」の責任と、曖昧な基準で箔を付ける危険
本メディアでは継続して「メディアが似非スタートアップを持ち上げてしまう危険性」について言及して参りました。今回、フォースタートアップスは最新分は公表見送りの判断をされていますが、過去分は引き続き掲載され続けており、悪用される可能性は孕んだ状態となっています。
国内スタートアップ評価額ランキングTOP20最新版(2023年1月)です。「いつでも働いた分の給与にアクセス」ADVASAが2,301億円で2位に急上昇。五常・アンド・カンパニーは70億円調達。GVEも評価額増となりました。 pic.twitter.com/URNcEeypIs
— Yuichiro Shimizu (@You7089) January 17, 2023
また代表の志水CEOのツイートなども残ったままとなっており、基準として曖昧だったと判断したのであれば、過去分に関しても掲載を取りやめるなどの対策は行うべきではないでしょうか。
このようなランキングが何らかのグレービジネスに使われるケースは多いため、フォースタートアップスの毅然たる対応に期待します。