粉飾決算疑義のオルツ、”AI企業”ながらもメルカリ・楽天を人力で転記。クラウドワークスで大量募集の実態。

パーソナル人工知能(P.A.I.)を掲げ、「世界中の労働を代替する」を標榜する株式会社オルツ。

ところが CrowdWorks に公開された求人を見ると、AI で容易に自動化できそうなリスト作成・データ入力・記事執筆などを人力発注していた実態が浮かび上がった。

本稿では、公開情報だけで確認できるクラウドワークスの募集をピックアップし、粉飾決算疑義が取り沙汰される同社の“理想と現実のギャップ”を整理する。

オルツのクラウドワークス求人で垣間見えた「人海戦術」案件

オルツのクラウドワークスページが下記である。募集実績444件とかなり活用していたことが垣間見えた。

当メディアでは444件を調査し、現状公開されている全てのオルツ案件概要を確認した。
その中の数件において「AI企業なのに、行儀が良い」募集を複数見つけたので紹介する。

データをスクレイピングせず、手作業で収集しているのである。

1.オルツカンファレンス用にポケモン攻略情報をライティングしてほしい

まず気になった募集が「オルツカンファレンス用にポケモン攻略情報をライティングしてほしい」という案件である。

AI生成企業であれば攻略サイトを読み込ませてしまうケースが多いように思えるが、オルツに関してはあえて画像・動画無しで2.5万~5万文字をライティングをさせている。

一度、手動ライティングを経由させる何か狙いがあるのかもしれないが、募集からは読み取ることができなかった。カンファレンスで使用されたのだろうか。

2.メルカリ・楽天から商品情報を検索して、手動でリストを作成。

Webでの解析、情報取得で一般的なのがスクレイピングでの情報収集だろう。

Googleは全世界のサイトをクロールし、検索サービスを展開しているし、
オークファンはヤフオク、ebayなどの商品情報をクロールし、サービス展開している。

しかし、オルツは違った。「楽天」「メルカリ」と協業するECサイトを展開すると謳う募集で、ユーザーに商品情報を検索させ、価格や商品名などを手動でリスト作成していた。

一般的なAI企業であればスクレイピングするところを、手動で依頼するオルツ。
その件数およそ5000件以上。しかも1商品の転記に75円支払っている。

クローリングしない理由は、各Webサービスの利用規約を守るという意思なのだろうか。
AI企業としては異例のコンプライアンス重視姿勢が伺える。

3.レアポケモンカードの価格検索をしてほしい

最後にレアポケモンカードの商品検索である。
これも一般的なAI企業なら既存カードECなどをクロールさせて価格を取得するところである。

このあたりを徹底して手動転記させるあたり、行儀の良さが垣間見える。

オルツ、クラウドワークスで業務委託エンジニア募集を繰り返していた

オルツは最先端のAI企業である。有価証券報告書のリスク面においても、先端人材採用が難しくなると競争力が低下するリスクが有ると記載をしている。

オルツ新規上場時の有価証券報告書より

一方、彼らのクラウドワークスを見ると「AI開発」の募集を大量に繰り返していたことが見えてきた。

その数およそ100件以上はエンジニア採用で募集を出していた。クラウドワークスではすでにAI特化の専門人材が採用できる状況のようである。

また、業務委託のセールスもクラウドワークスでかなり多く募集していた。

当メディアによるオルツ求人の洗い出し。全444件

一方、田端信太郎氏の入手したオルツ業務委託契約書では、業務契約の交換条件としてAI GIJIROKUの月額プ20万円プランを契約させていたというリークがされている。

もしこの情報が事実で、仮にクラウドワークスで募集した人材にも同様の契約を課していたとすれば、問題はオルツ社だけにとどまらないだろう。

オルツは「粉飾」していたのか?当時、記事を書いたときに想定していたこと。

当メディアにおいてはオルツ社に関して、上場前に一度記事にしている。
当時考えていたことは、オルツ社の少人数の売上急成長は、販売店を経由させた循環取引ではないかということだ。

NASDAQに上場したWarranteeもたった1社からの多額の売上で上場を果たしていた。いわゆる上場前に化粧させるスキームである。
下記スキーム図のように密な企業を経由し、売上を還流させることで実体成長があるように見せかけることができる。

当時の記事ではオルツ社の疑義を検証するために、販売代理店の業態が異業種であること、さらに少人数であることを指摘していた。

これら調査の結果、実態がないのではないかと疑問視していたのが執筆時点で想定していたことである。さらに広告比率も90%を超えており異常値であるとも指摘しており、広告費からの還流を疑っていた。

しかし、その多額の広告費の支払先はADK。大手代理店が絡んで循環取引するとは到底思えず、「AIパワーによって、少人数でも売上が立っているのかもしれない」などという意味不明な記事となってしまった。

そして現在、オルツ社には粉飾決算疑義がSESCより呈されており、田端信太郎氏の入手したリーク資料ではADKの関与が疑われている。

田端信太郎氏の直近の動きをみて、当メディアのスタンスを反省するとともに、読者の皆様にはオルツ記事の執筆時点で、追求できていなかったことをお詫びを申し上げたい。

上場企業には、極めて重い責任が伴う。最近では、X上で「個人株主を軽視している」と受け取られかねない論調が散見されるが、当然に般個人から資金を集める以上、経営者にはそれに見合うだけの責任が厳しく問われるべきである。

その責任とは、単なる一時的な株価上昇ではなく、永続的なビジネスモデルの構築と発展を通じて、実態を伴った株価を実現することである。仮にオルツ社がビジネスモデルもなく、粉飾を行っていたとすれば、それは個人株主を欺く断じて許されない行為にほかならない。

また、粉飾の疑義が証券取引等監視委員会(SESC)から指摘され、同社株はストップ安に陥っている。最も深刻な被害を受けたのは一般個人投資家であることを忘れてはならない。こうした事態を招いた背景には、東証の上場審査部にも問題があるだろう。今後の審査においては、取引比率の高い企業群との実態を含めた商流調査を徹底することを、改めて強く要請したい。

 

オルツの粉飾疑義についてリアルタイムに話す、特設オープンチャットはこちらから。
オープンチャット:オルツ粉飾疑義総合

参考記事:
AI議事録で新規上場の「オルツ(260A)」、たった16名で売上41億円。その取引先も少数精鋭で高い売上高を

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