【保存版】朝倉祐介CEO時代のミクシィ経営改革を振り返る。社員の3割が退職、痛みを伴った改革の実態とアダルト出会い系買収。

皆さんはミクシィのV字回復劇をご存知でしょうか。

2013年、事業の主軸だったSNS「mixi」はFacebookやTwitterの台頭により急落。
そしてFY2013の2Qでは上場以来初の赤字転落にまで陥っていました。その次の3Qでモンストをリリース。

ミクシィ 2013年度決算説明資料より引用。グラフの緑箇所がモンスターストライクの売上高にあたる。

モンスターストライクは大ヒットし、時価総額は5000億円まで上昇。
このV字回復のキーマンとして弱冠30歳で代表取締役に就任した朝倉祐介氏だと言われています。

社長就任時、弱冠30歳だった朝倉氏。経歴がユニークで元ジョッキーから東大。
その後、学生起業しマッキンゼーに入社、そして自身が立ち上げたスタートアップに出戻り。
最終的にミクシィからM&Aされ入社という異色の経歴から再生の旗手として多くのメディアに取り上げました。

SUAN編集部も経営を改善させた立役者として認識しておりました。

そんな中、朝倉氏の自著「ファイナンス思考」を拝読し、朝倉氏自身のミクシィ経営者時代の振り返りと実際の経営改革には強い乖離があったのではないかと疑念を感じ、実態を調査した記事がこちらとなります。

注意:本記事には追い出し部屋(ミクシィ社は否定)についての記述がございます。当該関係者の方は強いフラッシュバックを起こす可能性がありますので、当時在籍されていた方は閲覧を留意くださいませ。

朝倉祐介のCEO時代はたった約8ヶ月。その間に怒涛の経営改革が行われた。

下記が朝倉氏がCEOに就いてからと本記事で取り上げる重要なトピックとなります。

本章では取り上げませんが、ANRI1号ファンドへの出資※1などスタートアップと強い繋がりを作ったのも朝倉さん時代でした。

※1.ANRI1号ファンド募集総額1.5億円のうち5000万円がミクシィの出資となっており、ANRIの立ち上げに大きく貢献した

朝倉さん時代にスタートアップへの出資、プロパー若手社員への権限移譲など多く行われました。そういった功績のある一方で目先のPL改善を重視した危うい経営が行われていた可能性について取り上げます。

アダルト出会い系「YYC」をミクシィが買収。売却側のLINEは上場に備えた健全性の整理という思惑だったか。

まず朝倉さん時代に売却した企業の一つで、出会い系サイトYYC運営の株式会社Diverseが存在しています。LINEから譲渡され、買収価格は約10億円、純資産が大きかったため実質5.6億円の買収です。

取得価額は10億だが純資産があるため、実質5.6億円程度での買収(ミクシィ 有価証券報告書より)

実質5.6億円での買収後、たった2年で5.6億円の最終利益を稼ぎ出しており、ほぼ買収金額を回収できてしまったのです。

数字だけみればまさにナイスディール、朝倉さん素晴らしいという一言です。
ですが、この「YYC」というサービスが非常にいわくつきの事業だったのです。

こちらはやまもといちろう氏のブログ情報から引用になります。

実はLINEが上場準備で健全性を高めるためにミクシィに売却したと言うのです。実際にLINE上場に影響があったかどうか、は一旦隅に置いといて、YYCとはどのようなサービスだったのかを調べたところ、確かにかなり危うい事業だったことがわかっています。

一応モザイクは入れますが多少ポルノな情報が入りますのでご留意ください。

2013年夏、買収直前の「YYC」スレでは売春や、業者の出入りが日々つぶやかれる。そして、ミクシィ買収後も同様の話題は継続。

2013年買収直前の2ちゃんねるに存在していた「YYCスレ」の投稿がこちらになります。

この書き込み何かというと、「売春」に関する書き込みなんです。

ちなみにミクシィが買収以降もこのような売春書き込みは継続されており、ミクシィで運営するプラットフォーム上で売春行為が行われていた可能性があります。

ミクシィ側も買収後にやり取りは見れているはず。探すとかなり多く同様の内容が含まれた記事が見つかります。

アダルト掲示板でのわいせつ画像の投稿も起きていたか。アダルト掲示板はIBJへの売却後、IBJが即廃止の対応に。

また、YYCには「アダルト画像掲示板」という機能が存在しており、アダルト目的の投稿も可能となっておりました。下記は編集部でモザイクを入れていますが、このようなモザイクがない状態の画像がアップされていた可能性が高いです。

htp://yyclivedoor.web.fc2.com/より引用。モザイク処理はSUANにて編集。

その後、2018年にミクシィはYYCを売却します。東証一部上場のIBJにDiverse(YYCなど運営)を売却し、買い取ったIBJはほぼすぐに「アダルト掲示板」を廃止しています。この掲示板のリスクがあると判断したのではないでしょうか。

そもそも買収に関して、割安だからといってこのようなアダルト要素の強い事業に手を出すことが、当時のミクシィの社是である「全ての人に心地のよいつながりを」の「つながり」と合致するとは到底思えません。

人員削減に着手、「追い出し部屋」に近い人事異動を実施し、全社員の33%が退職。

続いて全社員の3人に1人が退職することとなった「追い出し部屋」騒動についてです。
国内において不当な追い出し部屋は違法とされるリスクもあるため、人員削減を行う際は退職パッケージを用意した「整理解雇」などを取るのが上場企業では一般的です。

社員の3人に1人が退職したこの騒動。どのような騒動だったのでしょうか。

13年10月、はてな匿名ダイアリーで怪文書が投下される

はてな匿名ダイアリーに、「オレンジなソーシャル会社の大規模リストラ」と名付けられた怪文書が投下されます。

静かにリストラが始まってると告発した投稿はいっきに拡散され、東洋経済などが追加報道を行いました。
東洋経済の報道によると、突然オフィス外の貸し会議室に集められ、社内VPNのアクセスを解除されCSの部門へ異動を命じられたとのこと。

そしてこの報道に対して、会社側は「通常の人事異動でリストラではない」と発表しておりました。

さらに決算会見でも朝倉社長自身が「リストラではない、社員は横ばいか微減を想定している」とし、「アンケートでは社員満足度は改善している」などと答えたと報じられています。

引用:IT MEDIA

ちなみに、決算説明後の囲み取材は一切無視したとも報じられております。

この「追い出し部屋」報道の現場となったのが旧オフィス セミナールーム(住友不動産渋谷ファーストタワー7F)になります。

このような50名収容可能なセミナールームに封じ込め、社内VPNへのアクセスを遮断。普段入れていた執務スペースの出入りを禁ずる‥。
これは「追い出し部屋」と言われてもおかしくない状態だったのではないでしょうか。

恐らく就任時からある程度「人員削減」も視野に入れていたように思えます。

就任時の日経新聞によるインタビューで、「ミクシィ事業は営利を稼いでいないのに人が多すぎる」と指摘。そして実際に、有価証券報告書を見るとほぼミクシィを運営する事業の方が大幅に減少していました。

有価証券報告書より引用

リストラですら33%の削減なんて難しいにも関わらず、朝倉CEO時代の人事異動では33%の社員が退職していったのが「追い出し部屋」騒動の実態です。結果的に、退職パッケージを用意せず低コストで社員を大幅にへらす事に成功しています。

ある意味で、凄いなと感じます。しかし、組織全体に負のダメージも及ぼしかねない人事異動、現預金200億円がある状態で行う施策であるとは到底考えられません。なぜ合法的な整理解雇ではなかったのか。

朝倉祐介氏は「モンスト」に携わっていたのか?答えは恐らく否。

読者の皆さんは一点、気になるのではないでしょうか。「だけど、業績改善に貢献したでしょ?結果だけよければ良いのでは」と。らんぶるさんも同様のツイートをされていました。

では、業績改善の最大の打ち手となった「モンスターストライク」ですが、朝倉さんはどの程度、関わっていたのでしょうか?
ミクシィ現社長の木村弘毅氏の著書に「モンスターストライク」の企画から、開発、マーケティングのすべてが書かれておりましたのでご紹介致します。

2012年の末、現社長の木村氏は「ミクシィパーク」という事業を手掛けられており、クローズすることに。
その際に笠原社長に「木村にゲームを任せてみたい」と進言したのが前社長となる森田仁基氏でした。

そして2012年12月末、木村弘毅氏を筆頭にモンストチームが決起。小さいミーティングルームでプロジェクトは始まりました。奇しくもその1年後に同じフロア、直線距離数mの先に追い出し部屋が設立されることとなります。

モンストチームの立ち上がりは朝倉さんが社長就任する半年も前の話であって、アサインしたのは森田元社長。木村弘毅氏の著書には多くの社員の名前が出てきますが、朝倉さんの名前は一切出てこないことからポジティブな関与はそこまで多くなかったものだと想像されます。

SUANが「結果だけを見てはいけない」と常々口酸っぱく言っているのは、プロセスを見ないと評価対象を見誤るからという理由なのです。朝倉氏はこれらの経営改革、退任に伴い、たった8ヶ月で7億円の株式売却益を得たとのこと。

朝倉祐介氏自身は『ミクシィでの経営改革』どう振り返っているのか。自著「ファイナンス思考」から読み解く

では、朝倉氏自身は、この経営をどう振り返っているのでしょうか。2018年に発売された朝倉祐介氏の書籍「ファイナンス思考」にはPL脳と称して下記のような主張が書かれております。

「日本企業からGAFAが誕生しない理由は目先の売上・利益にとらわれる「PL脳」の影響だ」

そして、PL脳の正反対の考えである「ファイナンス思考」をGAFAは持っているがゆえに成功しているという主張が書かれておりました。

つまり、「長期的視野」で経営しているか「短期的視野」かという主張です。
この点を踏まえ、朝倉氏自身がミクシィ時代の経営をどう振り返りを『ファイナンス思考』から引用させて頂きます。

正直に白状すると、かく申す私もかつてはPL脳にとらわれかけていたひとりです。(中略)
監査法人から事業継続に重要な疑義や継続企業の前提に関する中期を付しかねない旨をちらつかせられると心が折れそうになるものです。(中略)

ミクシィ在籍時に私が意識していたのは、いかにして沈みゆく既存企業の受け皿となり、それに変わる新たな事業を築いていくかということです。いわば、「ノアの箱舟」を作るような心持ちで、日々の意思決定を下していました。

─『ファイナンス思考』はじめに より引用

自著の振り返りでは「自分もPL脳にとらわれかけていたが、PL脳には毒されていない」という主張を書かれていました。

ここまで読んでいただいた、読者に問います。

この記事で紹介した朝倉祐介氏の経営改革は「PL脳」、いわば短期的な施策は行っていなかったのでしょうか。朝倉氏はミクシィ経営者時代の具体的な施策についてあまり語られていません。今後、朝倉氏の言葉で、どのような経営施策をされていたのか発信頂けることを期待します。

そして最後に読者にいる経営者に問います。人の心すら壊す恐れのある「追い出し部屋」のような人事異動を、経営者は地位を利用し、断行してよいものなのでしょうか。

企業が存在している理由は、決して時価総額を追う「企業価値の最大化」ではなく、顧客、社員、取引先の課題解決・幸福を通じて社会を変えるためにあるべきです。経営者という強い権力を濫用するような経営改革には断じて反対意見であると表明させて頂きます。

経営者の皆様はせめて整理解雇、もしキャッシュが無いのであれば一人一人に向き合って、真摯に現状を話してください。

 

■本記事で紹介したおすすめ本『みんなも本書を読んで、次なるモンストを作ろう』

モンストの企画を編み出した手法など、詳細に語られていて中々面白い1冊でした。
本書を読むまでは、でらゲーの持ち込み企画だと勘違いしていました..。

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