【調査概要】
本調査は、スタートアップメディア「SUAN」が2025年11月2日〜3日にかけて実施したオンライン意識調査に基づくものです。
回答者数は 624件。回答は匿名形式で行われています。職業や肩書は自称であるため、回答引用においてその点を考慮ください。
89.3%がメルカリ社による刑事告訴プレスリリースの訂正を推奨。企業広報の責任者も「上場企業とは思えない幼稚さ」と回答。
フリマアプリ最大手のメルカリが、田端信太郎氏への刑事告訴をプレスリリースした問題が、世論を大きく揺るがしている。当初、同社が打ち出した「従業員を守る」という姿勢は一定の支持を得たものの、その後のメディア対応などを通じて「告訴の主体は会社ではなく社員個人である」という説明がなされたことで、世論は一変した。
2025年9月21日にメルカリ社は田端信太郎氏に対して刑事告訴を行った旨のプレスリリース(以下、当該プレスリリース)を配信した。当該プレスリリースには刑事告訴の主体が誰か記載されておらず、誰が刑事告訴をしたのか明確にされていないままである。
このリリースに対して、スタートアップメディア「SUAN」(以下、当メディア)が「メルカリ社による刑事告訴に関するアンケート」を実施したところ、メルカリ社代理人を名乗る弁護士より「刑事告訴はメルカリ社ではなく、メルカリ社員が行ったものであり、当該記載を継続するようであれば法的措置をする」旨が代理人より告げられたのである。
当メディアはどう表現を修正し、誤解を招く表現の使用についてお詫びを配信している。
【お詫び】株式会社メルカリより「法的措置を講じる所存」とご指摘頂いた件についてhttps://t.co/KtH9amimop
— SUAN / スタートアップメディア🎈 (@suan_news) October 30, 2025
このメルカリ社の一連の対応に対して、Xにおいて辛辣な意見が多く寄せられていた。
従業員が、業務を通じて侮辱されたとして、
その従業員が個人の判断で刑事告訴して、それを雇用元の企業がプレスリリースで「刑事告訴したった❗️」ってアッピールするの、中でどんなやりとりあったんだろ①侮辱された従業員から会社に「なんとかせい」の突き上げ
②会社が従業員を煽って刑事告訴 https://t.co/n9TogpDKSM— フェルヲ (@makkinze) November 2, 2025
これは普通のガバナンスでは考えられないことです。 https://t.co/NmRGaoBRIf
— 藤原正明@大和財託 資産価値共創業 (@fujiwaramasaaki) November 2, 2025
そしてその後、当メディアが2025年11月2日より実施した田端信太郎氏への当該刑事告訴プレスリリースに関する緊急意識調査(回答総数624件)では、メルカリ社の一連の対応に対し、極めて厳しい評価が下されたことが明らかになった。
調査によれば、実に97.4%が当初のプレスリリースを「メルカリが告訴したかのように読める」と回答。さらに、後の「社員による告訴」という説明に対し、75.0%という圧倒的多数が5段階評価で「最低評価(1)」を付けた。自由記述欄には「社員に責任を押し付けている」「トカゲの尻尾切り」といった批判が殺到。さらに、89.3%がプレスリリースの訂正を推奨している。
本件は、単なる広報戦略の失敗に留まらず、上場企業としてのガバナンス、そしてその根底にある企業体質そのものが問われる深刻な事態へと発展している。本記事では、624件の調査データ(回答者の77.4%が30〜40代、男性90.1%)と寄せられた声を基に、この問題の深層をリポートする。
第1章:圧倒的多数が「株式会社メルカリが田端信太郎氏を刑事告訴した」と認識
今回の騒動の発端となったのは、メルカリ社が公式ウェブサイトに掲載した当該プレスリリースである。SUANの調査では、このリリースが世間にどう受け止められたかが明確になった。
「下記のメルカリ社によるプレスリリースは『刑事告訴をメルカリが行った』『メルカリが支援した』かのように読めると思いますか」という問いに対し、「思う」と回答した人は97.4%(608人)に達し、「思わない」としたのはわずか2.6%(16人)だった。
さらに、「プレスリリースおよび一連報道を見たときの告訴者は誰だと思いましたか」という質問では、84.1%(525人)が「株式会社メルカリ」と回答。「メルカリと従業員」が14.7%(92人)と続き、「社員単独」と認識した人はわずか0.6%(4人)だった。
この結果は、メルカリ社が公式ドメインで発表した以上、その行動主体は会社であると受け止めるのが「社会通念」であることを示している。実際、調査では「上場企業のホームページで公表する以上、上場会社が行ったものと認識するのが社会通念上当然」(20代・男性・会社員)という指摘が寄せられた。
個人が告訴主体であったとしても、会社が公式にプレスリリースを打つという行為自体が、組織としての強い関与や是認を示すものと受け取られるのは当然だ。しかし、メルカリ社は後に「社員個人の告訴」であることを強調。この認識のズレこそが、不信感の始まりであった。
第2章:75.0%が「メルカリ社員による刑事告訴」という対応に最低評価「責任転嫁」の声
問題が深刻化したのは、当初の「会社としての毅然とした対応」という見方から一転、「告訴主体は社員個人」という説明がなされてからだ。
当メディアでは「メルカリ社が『社員による告訴』と説明した対応についてどう感じますか?」と5段階評価(1が最低、5が最高)で尋ねた。
結果は衝撃的なものだった。実に75.0%(468人)が最低評価の「スコア1(非常に悪い)」を選択。次点の「スコア2(悪い)」(15.2%)と合わせると、実に90.2%がこの説明をネガティブに評価している。
なぜこれほどまでに評価が低いのか。その理由は自由記述欄に寄せられた49件以上に上る「責任転嫁」というキーワードに集約されている。
「当初から誰が訴訟を起こしたのかはっきりせず、炎上してから社員に責任転嫁しているように見える」(40代・男性・会社員)
「会社を守ろうとした後に、イメージダウンを恐れて社員に押し付けたように見える」(30代・男性・会社経営者・役員)
「風向きが悪くなると責任を社員に擦り付けて逃げるムーブは良くない」(40代・男性・会社経営者・役員)
多くの回答者が指摘したのは、時系列で見たメルカリ社のスタンスの変化だ。当初は会社が社員を守るために主体的に動いたかのような印象を与えておきながら、批判が強まると「あくまで個人の問題」として一線を引こうとする姿勢が、「トカゲの尻尾切り」と映ったのである。
「社内の人間が社外の人間から誹謗中傷を受けた時、その相談や初期対応を取るのは多くの場合会社であるため。関与していないのも問題ですし、そうでないならトカゲの尻尾切りに見える」(20代・男性・会社員)
第3章:他社の広報担当者もメルカリ広報対応に呆れる「上場企業とは思えない幼稚さ」
今回の一連の対応は、一般のユーザーだけでなく、企業の広報・PRの担当者からも厳しい目が向けられている。特に批判が集中したのは、戦略の一貫性の欠如と、場当たり的とも取れる対応だ。
調査では「稚拙」「行き当たりばったり」といった指摘が24件寄せられた。中でも、広報の責任者を務める人物からのコメントは、事態の異常さを際立たせている。
「どの対応も一貫性がなく目的も不明瞭で、行き当たりばったりの対応に感じる。当方広報職の責任者をしていることもあり、メルカリ社の広報対応は上場企業とは思えない幼稚さを感じている」(40代・女性・会社員)
この「上場企業とは思えない幼稚さ」という強烈な批判は、メルカリ社のコーポレート・コミュニケーションが深刻な機能不全に陥っている可能性を示唆している。
さらに、プライム上場企業の広報責任者からも、企業の広報として「基本」ができていないという、手厳しい指摘が寄せられた。(特定を伏せるため年齢記載は省略)
「プレスリリースを出す際の基本は5W1Hを明確にすることです。特に主語を明確にすることは最も重要なポイントです。メディアに訂正を求める前に、誤解を招いたことをお詫びしてプレスリリースを訂正することが、広報が適切に機能している企業の当然の対応だと思います」(男性・上場企業社員/プライム上場企業広報責任者)
他にも、「非常にセンスのない対応で、会社としての底が知れる」(20代・男性・上場企業社員)、「ちぐはぐでまったく広報が機能していない印象」(40代・男性・会社員)といった声が上がり、プロフェッショナルな視点から見ても、今回の対応は擁護し難いものであったことがわかる。
第4章:メルカリ社の広報について、「ダサい」「お粗末」辛辣な批判の数々が募る
広報対応の失敗という指摘に留まらず、学生から経営者、さらには弁護士といった専門家まで、多様な層からメルカリ社の対応そのものに対する辛辣な批判が寄せられている。
「わざわざ公式アカウントでプレスリリースまで出しといて会社は関係ないみたいなのはダサい」(20代・男性・学生)
「お粗末にも程がある。会社として社員を守るために田端さんを訴えた!ってのはまあしょーもないけど社員を守るってところに正義はあった気がする。(中略)ただ、ここに来て『あれは社員がやりました』ってのはあんまりでしょう。全然社員を守ってないどころか、何なら晒してしまってる。カスハラを語る資格すらない」(40代・男性・会社経営者・役員)
「苦し紛れで行き当たりばったりの対応にしか見えない。広報や経営層はやはり無能なのではないか」(30代・男性・会社員)
「対応が稚拙。第三者的なレビューが機能しておらず、感情的な意思決定がなされているようにしか見えない」(30代・男性・スタートアップ経営者)
また、株式市場の視点からも、経営リソースの使い道を疑問視する声や、法務対応そのもののレベルを問う専門家の意見もあった。
「幼稚で上場企業とは思えない対応であり、心配してしまう。こんな一個人に対する攻撃にリソースを割かず、株価が低迷し、多くの株主に迷惑をかけている状況を、なんとか全社一丸で乗り切って欲しい」(30代・男性・会社経営者・役員)
「弁護士の意見です。名誉毀損などのネットでの誹謗中傷対応をなぞった結果で、アドバイスをした弁護士のレベルが低いとしか言いようがないです。(中略)後先を見据えたやり取りができる専門家に変えた方がいいと思います」(30代・男性・会社員/弁護士)
第5章:メルカリ社の公表した「メルカリ社員を侮辱から守る」という説明との矛盾
メルカリ社が当初のプレスリリースで掲げた「従業員等を守る責務を果たす」という大義名分は、今回の「社員個人の告訴」という説明によって、その正当性が根底から揺らいでいる。
調査では、「社員による告訴」と説明したことで、かえって当該社員に攻撃が及ぶのではないかという懸念が多数寄せられた。「社員への攻撃の懸念」を5段階(5が最も懸念)で尋ねたところ、「スコア5(非常に懸念)」が33.3%(208人)、「スコア4」が23.9%(149人)となり、合計57.2%(357人)の回答者が高い懸念を示した。
「社員を守る」どころか、会社が矢面に立つことを避け、社員個人を危険に晒しているのではないか――。この矛盾に対し、45件の指摘が寄せられた。
「ソーシャルメディアにおける誹謗中傷などから、従業員等を守る責務を果たすという、メルカリ社の姿勢と矛盾する」(30代・男性・会社員)
「社員個人による告訴だとしたら会社がプレスリリースで取り上げると大ごとになってしまうので、社員個人にとってデメリットでしかない」(40代・女性・会社員)
「該当社員の氏名がすぐに特定され、更なる炎上を生むと思う」(30代・男性・スタートアップ社員)
「突き放さずに最後まで会社が責任持つべき」(30代・男性・会社員)
当初のプレスリリースは、会社という強固な組織が社員を保護する姿勢を示すものと受け止められた。しかし、その実態が「社員個人の告訴」であったと明かされた今、会社は「守る」どころか、個人を特定されかねないリスクに晒しただけではないか、という厳しい批判に直面している。
第6章:メルカリ社、上場企業としてのガバナンス欠如か。辛辣な意見が集まる
本調査では、52件の回答者がメルカリ社の対応を「上場企業として不適切」と断じている。これは、単なる広報の失敗ではなく、企業の意思決定プロセス、すなわちコーポレート・ガバナンスの欠如を問う声だ。
「社員による刑事告訴」であれば会社が公式リリースを行うことは適切か、という問いに対し、70.0%(437人)が「スコア1(不適切)」と回答しており、この行動自体が社会通念から逸脱していると見なされている。
「政治家の汚職などでよく見るパターン。秘書が勝手にやった(自分には責任ない)。上場企業がすることではない」(40代・男性・その他)
この指摘は、今回の問題の構図を的確に表している。上場企業がその影響力を利用してプレスリリースを打ちながら、いざとなれば「個人の問題」として責任の所在を曖昧にする手法は、公の存在として許容されるものではない、という厳しい意見だ。
「欺瞞的な対応に終止符している。とても上場企業のすることではない。場当たり的」(50代・男性・会社経営者・役員)
「株主軽視ということもあるが、そもそもメルカリというプラットフォームにおける対応の悪さなども勘案すれば、内輪だけに優しい会社なんだなと思う」(30代・男性・上場企業社員)
第7章:メルカリ社の刑事告訴プレスリリースは「感情的」「私怨」経営判断への疑念
なぜメルカリ社は、これほどまでに一貫性を欠き、多方面からの批判を招く対応を取ったのか。調査では、その背景に合理的な経営判断ではなく、特定の個人(経営陣)による「感情的な動機」があるのではないか、という疑念が17件寄せられた。
「山田氏の個人的感情が何か悪さをしているように見える。とにかく田端氏を陥れたいみたいだ」(40代・男性・会社員)
「田端氏に対してアレルギーがあるのか過剰に反応しすぎている。山田進太郎氏が指示していると思うけど、嗜められる社外取締役がいないのかと可哀想に思う」(40代・男性・上場企業社員)
これらのコメントは、一連の不可解な対応が、経営トップの「私怨」に基づいているのではないか、という憶測を呼んでいることを示している。もし上場企業が、客観的な経営判断ではなく、経営者の個人的な感情によって動かされているとすれば、それは取締役会による監督機能が働いていない、深刻なガバナンス不全の証左に他ならない。
「情緒に任せて告訴する会社なんだと認識せざるを得ない、論理が通ってなくて怖い」(40代・女性・会社経営者・役員)
「感情的であり、組織的によく議論された行動には見えない」(40代・男性・会社員)
第8章:メルカリユーザーの信頼喪失と元支持者の離反も。
一連の騒動は、単なるSNS上の「炎上」に留まらず、メルカリのサービスを利用するユーザーの信頼を大きく損ない、実際の「メルカリ離れ」を引き起こしかねない事態となっている。
調査では、サービス利用の停止を検討するという、いわば「実害」に関する声も複数寄せられた。
「非常に残念です。今後はヤフオクを使います」(40代・男性・上場企業社員)
「よくない、サービスの利用もやめようかと思っている」(30代・男性・会社員)
「最悪です。メルカリの使用停止も検討しています」(30代・男性・その他)
しかし、何よりも深刻なのは、これまでメルカリ社の姿勢を支持していた層の「離反」である。当初、「社員を守る」という姿勢に共感していたユーザーが、今回の対応を見て一気に批判へと転じているのだ。
「私は前回アンケート時には、メルカリの告訴対応は社員を守るために必要という支持する立場であった。しかし今回のSuanへの対応で全く支持出来なくなってしまった。自社の言動の矛盾を作るだけの、ただただ悪手な対応だった」(40代・男性・上場企業社長・役員)
このコメントは、メルカリ社が今回の対応で失ったものの大きさを象徴している。一度は味方であったはずの支持層を、自らの「悪手」によって敵に回してしまった。ブランドイメージに与えたダメージは計り知れない。
結論:問われるメルカリの企業体質と説明責任
今回当メディアが実施した624件の意識調査は、メルカリ社の刑事告訴をめぐる一連の対応が、いかに世間の認識とかけ離れ、厳しい批判に晒されているかを白日の下に晒した。
当初のプレスリリースを97.4%が「会社主体の告訴」と誤認し、その後の「社員個人の告訴」という説明には75.0%が最低評価を下し、89.3%がプレスリリースの訂正を推奨している。
寄せられた「責任転嫁」「トカゲの尻尾切り」「幼稚さ」「ガバナンス不全」といった声は、これが単なるコミュニケーションの失敗ではなく、同社の根深い企業体質の問題であることを浮き彫りにしている。
「社員を守る」という大義は、「社員に押し付けた」という疑念によって完全にその輝きを失った。上場企業として、株主、ユーザー、そして何よりも自社の従業員に対し、一貫性のある誠実な説明責任を果たすことが強く求められる。
当メディアより同社代理人に対して回答を求めたが、本記事掲載時点では「これ以上の返答は控える」と同社代理人は答えている。誤解を招くプレスリリースの修正とともに、今後、田端信太郎氏との法廷の場においては同社の関与状況が厳しく問われることになるだろう。
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